読影セミナー:その2

 経理・事務を担当しています黒田です。

 読影セミナーをなぜ行っているのかをイメージ・コミュニケーションの先生方に聞いたことがあります。理由は二つだそうです。

 一つは自分たち自身のスキルアップのためだそうです。教え役になると、上手に教えようとして周辺事項も調べたりするので、それをきっかけに知識がより整理されたり、広がったりするとのことです。

 もう一つの理由は、組織として少しでも教育活動を行いたいという考えがあるからだそうです。その考えに至ったきっかけは、ある放射線科の先生が書いた文書を目にしたことで、要旨は次のようだったとのことです。

スライド2

 「医師は働き始めたら必ず先輩の先生に教えてもらう。教えてもらうので一人前になることができ、それで医療の世界は維持されている。教える側は主に若手医師を多く抱えている大学病院や一般病院の勤務医の先生方だ。そこでは多くの熱意やボランティア精神が注ぎ込まれている。一方、遠隔診断を生業としている医師は通常、教育業務に従事していない。先輩医師による熱意やボランティア精神に支えられて一人前になれたはずなのに、いざ自分が専門医を取って一人前になった後は、後輩の指導はせず、自分達だけのために働いている。仮にこのような働き方をする医師ばかりになればどうなるか。医療は維持されなくなるではないか。」

 イメージ・コミュニケーションのある先生によると、これを目にするまでは「うちは画像診断に特化した組織だから、契約していただいている病院から期待されている業務はあくまで画像診断で、それに専念すればよい。若い先生方への教育はそれが業務として組み込まれている施設が行うものだ」という感覚でいたそうです。確かにそれも一理あるように思えますが、一方、教育が業務に組み込まれている施設といっても、例えばその先生自身が働き始めの頃に教育をうけていた施設を振り返っても、先輩達は指導医としてやらねばならない最低限の分だけ教えているという感じではなく、実際には多大なボランティア精神をもって接してくれ、とても多くの時間を自分達に割いてくれていたそうです。

 続けてその先生は次のように話されました。
「教育が業務に入っているとか、入っていないとか、そんなケチ臭い概念を超えて医療は受け継がれてきたというのが実際でしょう。そう考えると、遠隔診断会社で勤務する医師がボランティアで若い先生方に対して教育活動をすることがあったとしても、何も不思議なことではありません。それどころか、あの文書を書かれた先生も感じておられるように、会社だからといって若い先生方に対して何も教育活動を行わないで平気という方が不自然と思うようになりました。といってもまだ年数回なので、『やってます』と堂々と言うのは甚だおこがましいのですが、とにかく若い先生方に対する教育活動がゼロという状態からは脱しました。」

 イメージ・コミュニケーションは診断専門医取得後の先生方しか勤務していないので、専門医取得前の先生も含めた若い先生方に教育活動を行うためには外部の先生を対象にセミナーを開くしかありません。最初は正直、来てくれる先生がいるのか不安もあったそうですが、何回かやっているうちにその心配はないことがわかってきました。イメージ・コミュニケーションでは今後もより内容を洗練させ、少しずつでも規模を広げながら、教育活動を継続していく予定です。

読影セミナー:その1

 経理・事務を担当しています黒田です。

 11月16日(土)、11月30日(土)にイメージ・コミュニケーション読影室で「関節領域の3T-MRI読影ハンズオンセミナー」を開催しました。このセミナーは関節領域の診断に今ひとつ自信が持てないという若い放射線科の先生方(専門医取得前後の年代)を対象に行っているものです。実際にモニターを見ながらマンツーマンに近い形式で進めていくため、少人数でないと難しく、今回は計5人の先生方のみの参加とさせていただきました。実は2年前から知り合いの先生の間で希望者を募って同様のセミナーを行っていたのですが、ホームページでも受講者を公募して行ったのは今回が初めてです。

ハンス~1

 このセミナーの特徴は「自分でモニターを動かして実症例をみること=ハンズオン形式」と、「同一疾患の軽症例~重症例をまとめて連続的にみること」です。セミナーを担当されている先生方によるとこれが診断能力を高めるのに最も効率的とのことでした。より理解しやすくするため、みる症例の順番にも工夫があるそうです。

 実際には30分の基本知識の講義のあと、ハンズオン形式のセミナーが始まります。症例ごとにみる時間を区切って軽症→重症例と診断し、直後に解説が入ります。これを1セットとし、次のセットに進んでいきます。今回の対象は「肩関節」でしたので、例えば腱板損傷のセット→関節唇損傷のセット→投球障害のセット→・・・という具合です。時間通りに次々に各セットを進めていくので、「ブートキャンプ方式」と呼んでいる先生もいます。

 同じ放射線科医であっても、勤務している施設によっては経験する症例の分野に偏りがあり、関節の診断に慣れる機会に恵まれない先生も多いとのことです。セミナー後には受講した各先生とも診断に自信がついたといっておられ、教えておられたイメージ・コミュニケーションの先生方も嬉しそうでした。

 今年度の読影セミナーはこれで終了ですが、来年度も開催する予定です。現在はこのセミナーは定員を少人数に限定して行っていますが、来年は一度にもう少し多くの先生方に受講していただけるようにできないかと、現在工夫を考えています。募集時期がきたらまたホームページでお知らせ致します。

 今回は読影セミナーの形式について主に紹介しましたが、次回はなぜイメージ・コミュニケーションが読影セミナーを行うようになったのかの経緯について紹介したいと思います。